コラム

母は強し!扶養親族の綱引き

2010 年 3 月 1 日 月曜日

■離婚し、子は母方に
 離婚後、養育費その他の費用を負担している父と、日常の起居を共にしている母とが、それぞれの勤務先に長女を扶養親族とする「扶養控除等申告書」を提出しているような場合、法律は、どちらか一方の扶養親族として調整することを要求しています。

■調整不能時の判定
 では、その調整ができない場合にはどういうことになるのでしょうか。判断基準を考えるとしたら次のどれになるでしょうか。
①現実に長女と日常の起居を共にし、より多くの養育費を負担している者を優先すべきである
②納税者有利の原則から所得の大きいほうの扶養親族にすべきである
③長女を扶養親族とする「給与所得者の扶養控除等申告書」を先に勤務先に提出したほうを優先すべきである

■あなたの見解は?
 なんとなく、①が最も正論、②は現実論とは言えるもののスジ論としては弱そう、③は意外な回答サンプルを提示するための異端な屁理屈、と思えそうです。
 実際、この問題で係争となった事案があり、国税不服審判所の裁決が出ています。

■審判所の見解は!!
 ①は母親の見解で、母親は税務署から長女を扶養親族とすることを否認され、増額更正処分を受けました。②は税務署の見解で父親側に味方しました。③は審判所の判断で、一転して母親に軍配をあげました。
 審判所の裁決は、母親の見解も税務署の見解も否定し、第3の見解としての③を判断根拠としました。③をもって法律の正しい解釈とするのは意外に思えますが、法令をよく読むと、確かに③とするのが正解になっています。

■法令の内容は次の通り
 法令には、①の見解の根拠になる規定はなく、規定があるのは②と③についてで、まず、勤務先に提出する扶養控除等申告書の提出の時間的先後をもって決着させるものとして③があり、それが決せられない場合は所得の大きい者の扶養親族とするとの②があります。
 審判所は、各勤務先に扶養控除等申告書の提出された日を問い合わせて、母親の提出日が早いことを確認して、母親の申告を優先採用するものとしました。書類は速やかに提出しておいたほうが有利なのです。

引当金って何?

2010 年 2 月 1 日 月曜日

引当金とは
「将来の特定の費用又は損失で、その発生が当期以前の事象に起因し、発生する可能性が高く、かつ、その金額が合理的に見積もることができる場合には、当期の費用又は損失として、引き当てなければならない」と中小企業の会計指針では言っております。
主旨としては、正しい期間損益の把握と、将来のリスクの回避の為です。

■代表的な例は
1. 退職給与引当金
退職金規定に従って合理的な金額を見積計上します。
2. 賞与引当金
賞与対象期間が当期に属し、支払が翌期になるような場合に引き当てます。
3. 貸倒引当金
将来の貸倒れに備えて引き当てます。
4. 製品保証引当金
製品の保証をしているメーカー等が、今期の製品の売上に対して、翌期以降に保証に要する費用や損失を見積もって計上します。
5. 返品調整引当金
保証と返品の違いで、製品保証と同様の考えです。

■法人税法上は
 会計上は、将来のリスクに対し様々な引当を要求されますが、税務上は「貸倒引当金」と「返品調整引当金」の2つしか損金算入は認めておりません。
税務上は原則、債務の確定していないものを損金としては認めません。上記2つの引当金も特別に認めているだけですので、従来認めていた「賞与引当金」や「退職給与引当金」のように、いつ認めないと言ってもおかしくありません。

■実務上は
 会計指針に従い将来のリスクに備え引当金は計上し、税務上は自己否認すると言うのが理想ですが、多くの中小零細企業は税務基準で引き当てているのが現状です。
 

節目の年齢で手続をお忘れなく

2010 年 2 月 1 日 月曜日

■社会保険・給与計算時、到達年齢による確認事項■
 社会保険・労働保険には、年齢により新たに保険料を控除したり、控除しなくなったりという、節目の年齢があります。これを覚えておくと、給与計算時に漏れることなく処理することができます。確認してみましょう。

■満40歳 健康保険の介護保険料の控除を始める年齢です。通常誕生月の翌月の給与より控除を開始します。

■満60歳 最近は定年の延長をする会社が増えてきましたが、一般的には満60歳を定年とし、退職か再雇用をする企業が多いと思います。再雇用の場合は定年前に給与額や勤務日数、仕事の内容等について話し合われる必要があるでしょう。働きながら年金を受給したい場合は、給与額により在職老齢年金が支給となります。

■満64歳 その年の4月1日現在に満64歳に到達していた方は、その4月より本人、会社とも雇用保険料負担がなくなり、控除の必要がなくなります。又、失業給付は65歳以降に退職した場合は「高年齢求職者給付金」として一時金支給となりますが、64歳のうちに退職した時に受ける基本手当の6割程度となってしまいます。

■満65歳 65歳以降も社会保険に加入していた場合は、給与額に関係なく厚生年金の定額部分は全額支給されるようになります。報酬比例部分の在職老齢年金の上限も上がり支給額も上がります。介護保険料は年金からの控除となるので会社での控除は終了します。

■満70歳 70歳以降も社会保険に加入していた場合でも、65歳以降と同じく在職老齢年金の制度は継続されます。但、厚生年金保険料の給与からの控除は終了します。なお、「厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」を必要な時期に提出しなければなりません。
 

ホンダに学ぶ経営のヒント その2

2010 年 1 月 8 日 金曜日

(その1より続く)

 また、発想や行動が硬直化していて新しいことにチャレンジできないことも多い。カマス理論で中途採用者を積極的に活用したり、外部とアライアンスをするなどして、組織を活性化する必要があります。

 次に、管理会計の導入です。ホンダは得意分野に経営資源を投入するとともに、経費削減を実行し効果をあげていますが、これを実現するためには管理会計を導入し、自社にとって投資すべき分野はどこで、節約すべき分野はどこかを常に把握しておく必要があります。投資すべき分野には戦略経費として予算を割り付け、節約すべき分野は節約可能費として徹底的に効率化するなどメリハリをつけたマネジメントを行うのです。

 景気も厳しく、多くの企業は赤字です。しかし、このような状況でも増益を実現するホンダのような企業もあります。商品開発プロセスの見直し、新たな人材やアライアンスなどによる組織活性化、管理会計による経営資源の効率的なマネジメントなど参考になる施策もあると思われます。自社の経営にどのように取り入れるかを研究し、収益回復を実現していただきたい。

 ※カマス理論:カマスは水槽に小魚と一緒に入れると通常小魚に襲いかかるが、透明なガラス板で両者を間仕切り、何度襲ってもガラスに阻まれる経験をさせると、その後ガラスを外しても小魚を襲わなくなる。しかし、新たに別のカマスを入れると新しいカマスは当然小魚に襲いかかり、それを見た最初のカマスも目覚めたように再び小魚に襲いかかるという話。(了)
 

ホンダに学ぶ経営のヒント その1

2010 年 1 月 8 日 金曜日

 ホンダの業績が急回復しています。

 2010年3月期の連結純利益予想が、従来発表の550億円から前期比13%増の1,550億円となる見通しです。増益要因は、主として二つのようです。一つは、新興国への販売が増加したこと、もう一つは、効率的に経営したことです。

 新興国への販売増加は、二輪車で培ったブランド力を武器に拡販できたことが大きく、新興国向け販売比率を増加させています。効率経営は、小型車から大型車までのフルラインナップではなく、フィットを中心とする小型車に経営資源を集中していることがポイントです。これにより設備投資を抑制することができ投資効率が高いようです。これらの効果から、他の自動車メーカーと比べて収益改善のピッチが早まっています。では、中堅中小企業にとって、ホンダに学ぶべきことはどんなことでしょうか?

 まずは、強い商品を育成することです。ホンダは、エコ意識の高まりというニーズをとらえて燃費のよい小型車のフィットやハイブリッド車のインサイトなどの商品を提供しています。また、海外では二輪車という強い商品でブランド力を築いています。フィットやインサイトのようなニーズに合致しかつ競合他社よりも優れた商品を持っていないと抜本的な収益改善は難しい。特にメーカーの場合は強い商品(技術)を持つことが重要です。

 中堅企業の中には社歴も長く、過去には一世を風靡した商品で高収益を誇ったが、その商品が競争力を失うに連れて営業赤字に転落している企業があります。このような企業は、商品開発プロセスが型どおりで機能しておらず、市場の声や潜在ニーズを商品開発に反映できていないことも多い。(つづく)

配偶者特別控除及び保険料控除申告書の記載内容の確認

2009 年 11 月 25 日 水曜日

 今回はおもに配偶者特別控除申告書及び保険料控除申告書の記載内容の確認について記載します。1つずつ確認していきましょう。

Ⅰ 配偶者特別控除の記載内容、控除額の確認
① 給与の支払を受ける人自身の合計所得金額が1,000万円を超えていませんか。
② 配偶者控除の対象となる人(配偶者の合計所得金額が38万円以下)又は配偶者の合計所得金額が76万円以上となる人について、配偶者特別控除を適用していませんか。
③ 配偶者が他の人の扶養親族とされる人、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者に該当しませんか。
④ 配偶者特別控除額は配偶者の合計所得金額に応じて調整されることになっていますが、控除額の計算は正しく行われていますか。

Ⅱ 社会保険料控除の確認
① 申告された保険料は、社会保険料控除の対象となるものですか。
② 所得者本人又は所得者と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料で所得者本人が支払ったものですか。
・年金から特別徴収(天引き)された介護保険の保険料や長寿医療制度の保険料は、年金の受給者自身が支払ったものであるため、年金の受給者に社会保険料控除が適用されます。
③ 国民年金の保険料又は国民年金基金の掛金について、支払ったことが分かる証明書類が添付されていますか。

Ⅲ 生命保険料控除の確認
① 保険金又は年金の受取人は、一定の範囲内の人となっていますか。
② 申告された保険料は、所得者本人が支払ったものですか。
③ 分配を受けた剰余金や割戻しを受けた割戻金は、支払った保険料の額から差し引かれていますか。
④ 一般の生命保険料と個人年金保険料の区分を適正にし、控除額の計算が正しくされていますか。
⑤ 保険料を支払ったことが分かる証明書類が添付されていますか。
・一般の生命保険料…1契約の支払保険料が9,000円超のもの
・個人年金保険料…すべての支払保険料

Ⅳ 地震保険料控除の確認
① 所得者本人又は本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋やこれらの人が所有している生活に通常必要な家財を保険の目的としていますか。
② 地震保険料と旧長期損害保険料の区分が正しくされていますか。
③ 保険料を支払ったことが分かる証明書類が添付されていますか。

扶養控除等(異動)申告書の記載内容の確認

2009 年 11 月 25 日 水曜日

 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下「扶養控除等申告書」といいます。)のチェックポイントを、「扶養控除等申告書の提出の有無等の確認」、「控除対象配偶者と扶養親族の確認」、「障害者の確認」、「寡婦(又は寡夫)の確認」、「勤労学生の確認」の区分に分けて説明します。1つずつ確認していきましょう。

Ⅰ 扶養控除等申告書の提出の有無等の確認
① 扶養控除等申告書を提出できる人で、提出漏れとなっている人はいませんか。
② 本年中に結婚や出生などにより扶養親族等に異動があった人について、扶養控除等異動申告書が提出されていますか。

Ⅱ 控除対象配偶者と扶養親族の確認
① 控除対象配偶者、扶養親族の合計所得金額は38万円以下となっていますか。
② 配偶者控除の対象となる人について、配偶者特別控除も適用していませんか。
③ 特定扶養親族、老人扶養親族等の判定は正しく行われていますか。
④ 控除額の計算は正しく行われていますか。

Ⅲ 障害者の確認
① 障害者として申告されている人は、給与の支払を受ける人本人又は控除対象配偶者又は扶養親族となっている人ですか。
② 障害者として申告されている人は、障害者又は特別障害者に該当する人ですか。

Ⅳ 寡婦(又は寡夫)の確認
① 寡婦(又は寡夫)として申告されている人は、給与の支払を受ける人本人ですか。
② 寡婦(又は寡夫)の要件を満たしていますか。

Ⅴ 勤労学生の確認
① 勤労学生として申告されている人は、給与の支払を受ける人本人ですか。
② 本人の合計所得金額が65万円以下であり、かつ合計所得金額のうち自己の勤労によらない所得の金額が10万円以下ですか。
③ 専修学校や各種学校の生徒又は職業訓練法人の訓練生である人については、扶養控除等申告書に、在学する学校等についての文部科学大臣や厚生労働大臣の証明書の写しと学校長や職業訓練法人の代表者の発行する在学証明書などが添付されていますか。

残業時間、切り捨てご免?

2009 年 11 月 24 日 火曜日

 1時間未満の残業時間がある場合、企業によって、すべて切り捨て処理したり、30分単位で端数は切り捨て、など様々な対応をされているのではないでしょうか?
労働基準法24条に、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定されています。したがって、1分でも切り捨ててはならない、ということになってしまいますが、それでは事務が煩雑になるだけです。
実は、端数処理の方法については、通達で細かく定められています。

■1時間未満の残業時間
 1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のそれぞれの実際の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げて計算することができます。
 したがって、1日毎に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げて、その時間数を合計する処理は違法となりますので、注意が必要になります。

■賃金の端数処理
(1)1時間当たりの賃金額の端数処理
1時間当たりの賃金額および割り増し賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることができます。
また、1か月における時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの割り増し賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も同様です。

(2)1か月の支払額の端数処理
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合は控除した金額)に100円未満の端数が生じた場合は、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うことができます。

(3)千円未満の端数の繰越処理
1か月の賃金支払額に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことができます。

年末調整の時期と事務手続きとその準備

2009 年 11 月 20 日 金曜日

Ⅰ 年末調整を行う時期

 年末調整は、本年最後に給与の支払をする時に行うことになっていますので、通常は12月に行うことになります。ただし、次に掲げる人は、それぞれ次の時期に年末調整を行いますので、注意が必要です。
(1) 年の中途で死亡退職した人・・・退職の時
(2) 著しい心身の障害のため年の中途で退職した人で、その退職の時期からみて本年中に再就職ができないと見込まれる人・・・退職の時
(3) 12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人・・・退職の時
(4) いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる場合を除きます。)・・・退職の時
(5) 年の中途で非居住者となった人・・・非居住者となった時

Ⅱ 年末調整の事務手順とその準備

 年末調整の事務は大きく分けて、(1)年税額計算のための準備、(2)年税額の計算、(3)税額の徴収、納付又は還付の3段階となります。
(1) 年税額計算のための準備
給与の支払を受ける人から提出される①扶養控除等(異動)申告書、②配偶者特別控除申告書、③保険料控除申告書、④(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の受理とその記載内容と添付書類の確認(これらについては次回以降に記載します。)をします。
したがって、年末調整事務の開始時に、給与の支払を受ける人から上記の申告書が受理できるよう周知するほか、これらの申告書の記載に当たっての注意事項や添付書類の周知もあわせて行うことが必要です。
その後、本年中に支払った給与の総額と源泉徴収した所得税額の集計を行います。
(2) 年税額の計算
給与所得控除後の給与等の金額の計算、課税給与所得金額の計算、課税給与所得金額に対する税額(算出年税額)の計算、年調年税額の計算を行います。
(3) 税額の徴収、納付又は還付
(2)により計算した年税額と(1)により集計した源泉所得税額の合計額を比較して、過不足税額の精算を行います。

年末調整の対象となる人、ならない人

2009 年 11 月 20 日 金曜日

 年末調整は、原則として給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人の全員について行いますが、例外的に年末調整の対象とならない人もいます。1つずつ確認していきましょう。

Ⅰ 年末調整の対象となる人

次のいずれかに該当する人
(1) 1年を通じて勤務している人
(2) 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
(3) 年の中途で退職した人のうち、次のいずれかに該当する人
① 死亡により退職した人
② 著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
③ 12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
④ いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる場合を除きます。)
⑤ 年の中途で海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人(非居住者とは、国内に住所も1年以上の居所も有しない人をいいます。)

Ⅱ 年末調整の対象とならない人

次のいずれかに該当する人
(1) 上記Ⅰに掲げる人のうち、本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
(2) 上記Ⅰに掲げる人のうち、災害により被害を受けて、「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税の徴収猶予又は還付を受けた人
(3) 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人や、年末調整を行うときまでに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(月額表又は日額表の乙欄適用者)
(4) 年の中途で退職した人で、上記Ⅰ(3)に該当しない人
(5) 非居住者
(6) 継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者など(日額表の丙欄適用者)